新会社法改正ポイント解説
有限会社が作れなくなった
新会社法では有限会社を新たに設立することが出来なくなり、有限会社と株式会社が統合され、株式会社として一本化されました。
既存の有限会社はどうなるのかと言いますと、現在の法律上有限会社は存在しないことになり、現在有限会社という商号を使っている会社も法律上は全て株式会社ということになります。
資本金は1円でOK
こちらが今回の会社法改正の一番大きなポイントと言えるでしょう。
新会社法では、会社の設立に際して出資すべき額についての下限額の制限が撤廃(出資額規制の撤廃)されたため、1円の資本金で株式会社を設立できることとなり、経済に大きな活力を与えることが期待されています。
旧法で資本金の最低額は、株式会社で1,000万円、有限会社で300万円でした。
しかし会社設立以後、資本金とはあくまで計算上の数字で、その額の財産が常に会社にあるとは限らないものです。したがって資本金額の大小のみで会社の信用度を測るのは誤りと言えます。
また一方で、特にベンチャー起業家にとっては1,000万円の資本金を集めることは大変であり、会社設立のハードルが高くなっていました。最低資本金制度は有能な人材の起業を妨げ、経済の発展を妨げる場合もあったのです。
取締役などの役員も1人でOK
以前は、株式会社で取締役が 3 人以上・監査役も 1 人は必要でしたが、この規定も撤廃され、現在は取締役が 1 人でも会社の設立が可能となりました。(正確には全ての株式会社が1人でO.Kと言うわけではなく、あくまで株式譲渡制限タイプの中小企業の場合です)
以前は役員を揃えるのは様々な事情から困難な場合がよくあったので、この点においても会社設立の敷居が低くなったといえます。
また、役員の任期に関しても若干の変更があります。 以前は、「株式会社 → 取締役2年、監査役4年」でしたが新会社法施行後の現在は、定款により取締役・監査役ともに最長10年まで任期をのばすことも可能になりました。
任期を10年にするメリットは、これまでは任期ごとに、たとえ役員に変更がなくとも、再任の手続きが必要でした。手間もかかりますし、費用も最低1万円かかります。でも、定款で任期10年と定めれば、最大10年は面倒な手続きが不要になり経費の節約にもなります。
現物出資が簡単に
現物出資は、現金以外の資産(車・不動産・有価証券など)を出資することにより、資本金として計上することをいいます。
従来ですと、この現物出資には裁判所に選任された調査役の調査やら弁護士・会計士などの価格証明が必要であったりなかなかハードルの高いものでした。
現在の新会社法の下では「現物出資の金額が500万円以下」の場合にはこれらが不要になりました。このように手続きが容易になったので資本金の不足分を補うのに利用しやすくなりました。
例えば、300万円の物を出資し、300万円の現金を出資すれば、資本金600万円の株式会社を設立する事が出来ます。
類似商号の規制緩和
旧商法では、「商号」を付けるのに厳しい制限があり、そのために類似商号調査なるものが必要でした。
しかし、新会社法では「同一住所に、同じ又は類似した商号は使用してはならない」という決まりしかありませんので、実際同一住所に同じ商号や類似する商号があり得る可能性はほぼゼロに近いことから、「類似商号の調査は不要になった」と言われています。
ただし、近くに似た商号で同一の事業をしている会社がある場合など、不正競争防止法による商号使用の差止め請求や 損害賠償請求をされるといった可能性もありますので、念のために調査しておいたほうが安心でしょう。
資本金の払い込みが簡単に
新会社法で、会社設立時の払込金保管証明制度も変わりました。
発起設立によって会社を設立する場合は、「払込金保管証明書」は必要なく、銀行の残高証明で足りることとなりました。
これまで、会社設立の際には、銀行または信託会社が務める払込取扱金融機関が、設立登記前に、発起人または株式申込人から金銭出資の払込みがなされたことを証明する「払込金保管証明」が必要でしたが、
- 金融機関が払込取扱機関となることを引き受けてくれない
- 手続に時間がかかる(一般的に数週間程度)
- 費用がかかる(一般的に2万5千円程度)
- 設立登記が完了するまで払込金を引き出せない
などの問題がありました。
新会社法では、発起設立の場合には「払込金保管証明」は不要とし、残高証明で足りることとなりました。ただし、募集設立の場合は、株式申込人の保護のため、従来どおり「払込金保管証明」が必要ですので、注意が必要です。